作家、演出家、T factory主宰。1959年12月22日東京生まれ。横浜に育つ。
1980年、劇団第三エロチカ創立、以来全作品の演出・劇作を務める。1985年、「新宿八犬伝 第一巻-犬の誕生-」で第30回岸田戯曲賞受賞。1991年、映画初監督作品「ラスト・フランケンシュタイン」。
2002年3月、自作戯曲上演プロデュースカンパニー「T factory(ティーファクトリー)」創立。戯曲集・小説・エッセイ・評論など著書多数。
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猫
おとついのことである。
朝、いつもの通りに雨戸を開けて、みんなにご飯をあげてぼっとしていたところ、網戸が十センチほど開いているの気がつき、はっとして見ると庭に小夏が降りてこちらを見ている。
一瞬、幻覚か小夏に似た猫かと迷い、声をかけるとだっと門の外を走り去ってしまう。
脱走!?
慌てて、睦と愛の動向を確かめると、ふたりはいる。
泡食った。
家のまわりをうろうろするが、小夏の姿は見えず、数分後、隣の駐車場に姿を現すが、数分後走り去る。
次に隣の猫屋敷さんの庭にお邪魔して探していると、黒猫を追っかけながらの小夏を発見。
小夏、そのまま猫屋敷さんの物置の下に隠れる。
そこで小夏とにらみ合いが続く。小夏はかつての野良の目つき、顔つきである。三十分後、小夏飛び出し、またいなくなる。
いったん家に戻り、どうしようどうしようとしていると庭に小夏ひょっこり現れるが、私、「あっ」とか大声を出してしまって、小夏その声にまた逃げ去ってしまう。
戻ってきて小夏がすぐ上がれるようにと、窓や戸を開けっ放しにしているので、睦と愛を部屋から締め出す。愛はマイペースでしきっぱなしの布団の上でまどろんでいるが、睦は「なに締め出してんだオメーラ」と騒ぐ。その睦の声に応じるかのように小夏の声がする。
睦が鳴くと小夏が答え、どうやら家のまわりをうろうろしているらしい。
二十分後あたり、小夏ついに家に上がってきたところを一気に戸、窓を閉める。
脱走から三時間経っていた。
まあ、戻ってくるだろうとは考えてはいたが、一年七ヶ月外出していないので、心配であった。
しっかし、ひさしぶりに小夏の野生の姿を見たが、かっこよかったなあ。そういう猫生もあったわけで、考えてしまった。
とにかく睦、愛が今から外で生きていけるわけはないのだから、小夏ともども気をつけなければならないと気を引き締め直した。
小夏は外から睦に来いと呼んでいたとも思われるからだ。
私、外出の予定がない日でよかった。
で、その日は夕方メルボルンから日本に来ているピーターが打ち合わせ、飲み食いで家に来る日で、この猫騒動のことなどしゃべり、楽しい夕餉であった。
ピーターによれば今年これから開催される東京演劇フェスのプログラム、外国からのやつは相当おもしろいということらしいので、ドイツとイタリアのやつは是非行こうと思っている。
それにしても小夏、帰ってきてよかった小夏。
友人の川西蘭が新刊の本のなかで、飼っていた犬が死んで号泣する妻の姿を目の当たりにして、自分か死んだ時、このひとはこんなに泣いてくれるだろうかと不安になったと書いているが、ペットロスはつらいと想像する。
三頭のうちの一頭がそんなことになっていなくなれば、私は当分立ち直れないだろうが、それが未来、三回続くのである。その時、私は終わるかも知れない。
まあ、先のことを心配ばかりすると、わが母のように深い鬱病にかかるのでここいらでやめておこう。
朝、いつもの通りに雨戸を開けて、みんなにご飯をあげてぼっとしていたところ、網戸が十センチほど開いているの気がつき、はっとして見ると庭に小夏が降りてこちらを見ている。
一瞬、幻覚か小夏に似た猫かと迷い、声をかけるとだっと門の外を走り去ってしまう。
脱走!?
慌てて、睦と愛の動向を確かめると、ふたりはいる。
泡食った。
家のまわりをうろうろするが、小夏の姿は見えず、数分後、隣の駐車場に姿を現すが、数分後走り去る。
次に隣の猫屋敷さんの庭にお邪魔して探していると、黒猫を追っかけながらの小夏を発見。
小夏、そのまま猫屋敷さんの物置の下に隠れる。
そこで小夏とにらみ合いが続く。小夏はかつての野良の目つき、顔つきである。三十分後、小夏飛び出し、またいなくなる。
いったん家に戻り、どうしようどうしようとしていると庭に小夏ひょっこり現れるが、私、「あっ」とか大声を出してしまって、小夏その声にまた逃げ去ってしまう。
戻ってきて小夏がすぐ上がれるようにと、窓や戸を開けっ放しにしているので、睦と愛を部屋から締め出す。愛はマイペースでしきっぱなしの布団の上でまどろんでいるが、睦は「なに締め出してんだオメーラ」と騒ぐ。その睦の声に応じるかのように小夏の声がする。
睦が鳴くと小夏が答え、どうやら家のまわりをうろうろしているらしい。
二十分後あたり、小夏ついに家に上がってきたところを一気に戸、窓を閉める。
脱走から三時間経っていた。
まあ、戻ってくるだろうとは考えてはいたが、一年七ヶ月外出していないので、心配であった。
しっかし、ひさしぶりに小夏の野生の姿を見たが、かっこよかったなあ。そういう猫生もあったわけで、考えてしまった。
とにかく睦、愛が今から外で生きていけるわけはないのだから、小夏ともども気をつけなければならないと気を引き締め直した。
小夏は外から睦に来いと呼んでいたとも思われるからだ。
私、外出の予定がない日でよかった。
で、その日は夕方メルボルンから日本に来ているピーターが打ち合わせ、飲み食いで家に来る日で、この猫騒動のことなどしゃべり、楽しい夕餉であった。
ピーターによれば今年これから開催される東京演劇フェスのプログラム、外国からのやつは相当おもしろいということらしいので、ドイツとイタリアのやつは是非行こうと思っている。
それにしても小夏、帰ってきてよかった小夏。
友人の川西蘭が新刊の本のなかで、飼っていた犬が死んで号泣する妻の姿を目の当たりにして、自分か死んだ時、このひとはこんなに泣いてくれるだろうかと不安になったと書いているが、ペットロスはつらいと想像する。
三頭のうちの一頭がそんなことになっていなくなれば、私は当分立ち直れないだろうが、それが未来、三回続くのである。その時、私は終わるかも知れない。
まあ、先のことを心配ばかりすると、わが母のように深い鬱病にかかるのでここいらでやめておこう。
エリカ様と結婚した高城氏は二十数年前知り合いから紹介されて、スズナリで上演した『フリークス』の記録映像とか撮ってもらった人だ。
いいひとですよ。
そのころ、おれがハイパー・シアター・クリエイターと名乗っていたのを彼がメディアと変えて継承したんだ。ってのは大嘘。
でも、スズナリのことはほんと。
なんで結婚式の招待状くれなかったのかなあ。

うちの女優たち。

愛の柄はうっしーちゃん。
いいひとですよ。
そのころ、おれがハイパー・シアター・クリエイターと名乗っていたのを彼がメディアと変えて継承したんだ。ってのは大嘘。
でも、スズナリのことはほんと。
なんで結婚式の招待状くれなかったのかなあ。
うちの女優たち。
愛の柄はうっしーちゃん。
新しい玩具を買ってきたら、睦がやたらと気に入って遊ぶわ、遊ぶわ。
すごい運動神経である。

長い紐のおもちゃ。

私はほとんどこの姫の家来である。
まあ、この雌猫にとってみれば人間のおとこを陥落することなど造作も無いってわけだ。
すごい運動神経である。
長い紐のおもちゃ。
私はほとんどこの姫の家来である。
まあ、この雌猫にとってみれば人間のおとこを陥落することなど造作も無いってわけだ。
原稿をいまだにワープロで書いている私だが、今日ぐちゃぐちゃ書いていたら、うっかり今日書いた分三ページほどを消してしまって、あっと思い、指が震えた。時折、これをやってしまう。
そこで気を取り直して、なんとか記憶を呼び戻して書いたが、いやはやだ。
ところで小夏は落ち着いている。
小夏と睦は同じ容量かわいがってやらないといけない。
睦ばかりかまっているとじっと小夏が見ている。
小夏ばかりだと睦がさびしそうする。
愛はひとりマイペースなのである。

小夏とおれ、こんな感じの夜。

そこで気を取り直して、なんとか記憶を呼び戻して書いたが、いやはやだ。
ところで小夏は落ち着いている。
小夏と睦は同じ容量かわいがってやらないといけない。
睦ばかりかまっているとじっと小夏が見ている。
小夏ばかりだと睦がさびしそうする。
愛はひとりマイペースなのである。
小夏とおれ、こんな感じの夜。
京都から帰ってきた夜、三浦和義自殺のニュースに驚いた。
こういう終わり方か。
しかし、この人はどうも複雑な深みというものが感じられなくて、劇の主人公にするのは難しい。
などと思い、そうだ今日は十三夜だ、月を見ようと玄関のドアを開けると、するりと足元を小夏がすりぬけて、あっという間に門の外に出た。
家は大騒ぎとなって、愛と睦を一部屋に隔離し、窓などを全開して小夏を呼ぶ。
小夏は家の塀の上で鳴いていて、それ以上遠くにはいこうとはしないが、近寄ると逃げる。しばし、私とにらみあう。
で、家のなかから食物でおびき寄せ、はっしとつかんで、なかに入れる。この間、十分ほどだろうか。
小夏、初めての脱走というか、散歩であった。
発情期で外が騒がしいのに触発されてしまっているのだろうか。
愛と睦も不妊手術はしているとはいえ、なにか落ち着かない行動をとる。
あるいは小夏は連載戯曲とうたった「こなつさん」がなかなか進展していかないのに、ストレスを感じているのかも知れない。
いやはや、巨人の優勝といい、ロス疑惑のいやな感じの結末といい、いろいろある日々だ。
かつて週刊文春で三浦と闘った阿部という編集者は今は何をしていて、何を感じているだろうか。
こういう終わり方か。
しかし、この人はどうも複雑な深みというものが感じられなくて、劇の主人公にするのは難しい。
などと思い、そうだ今日は十三夜だ、月を見ようと玄関のドアを開けると、するりと足元を小夏がすりぬけて、あっという間に門の外に出た。
家は大騒ぎとなって、愛と睦を一部屋に隔離し、窓などを全開して小夏を呼ぶ。
小夏は家の塀の上で鳴いていて、それ以上遠くにはいこうとはしないが、近寄ると逃げる。しばし、私とにらみあう。
で、家のなかから食物でおびき寄せ、はっしとつかんで、なかに入れる。この間、十分ほどだろうか。
小夏、初めての脱走というか、散歩であった。
発情期で外が騒がしいのに触発されてしまっているのだろうか。
愛と睦も不妊手術はしているとはいえ、なにか落ち着かない行動をとる。
あるいは小夏は連載戯曲とうたった「こなつさん」がなかなか進展していかないのに、ストレスを感じているのかも知れない。
いやはや、巨人の優勝といい、ロス疑惑のいやな感じの結末といい、いろいろある日々だ。
かつて週刊文春で三浦と闘った阿部という編集者は今は何をしていて、何を感じているだろうか。
小夏がトイレに座ってなかなか出てこなかったり、何度もいったりするので、病院に連れていくと、残尿感がある故の行動で膀胱炎と診断される。うーん。このところの気候の変化による冷えか。あるいは、ばたばたと始動している人間の不規則生活につきあっているためのストレスか。
思えば夏の一月、人間も猫もまったり暮らしてしたのが、また忙しくなりだした日々である。
申し訳なく思う。
ほんとうは生来規則的な生活を好むのが猫というが、よくもこの不規則人間につきあってくれていると思う。小夏も愛も睦も、日々人間の起床時間が異なるものの、「飯くれ、起きろ」とは絶対騒がず、人間と共に起きている。愛、睦が騒がないのは、小夏の行動を見て、従っているのである。
小夏は薬をもらってきた。まあ、外見はいたって元気なのだが、本来野生育ちの猫は、外敵の脅威から滅多なことでは弱弱しい自分を見せることはなく、がんばっているものだというから油断はならない。
膀胱炎、くせにならなければいいが。
いたいけな小夏である。
思えば夏の一月、人間も猫もまったり暮らしてしたのが、また忙しくなりだした日々である。
申し訳なく思う。
ほんとうは生来規則的な生活を好むのが猫というが、よくもこの不規則人間につきあってくれていると思う。小夏も愛も睦も、日々人間の起床時間が異なるものの、「飯くれ、起きろ」とは絶対騒がず、人間と共に起きている。愛、睦が騒がないのは、小夏の行動を見て、従っているのである。
小夏は薬をもらってきた。まあ、外見はいたって元気なのだが、本来野生育ちの猫は、外敵の脅威から滅多なことでは弱弱しい自分を見せることはなく、がんばっているものだというから油断はならない。
膀胱炎、くせにならなければいいが。
いたいけな小夏である。
リーマン・ブラザースが破綻した。これでアメリカもかつての日本のバブル崩壊後かという話もあるが、アメリカの利点は、悪いところを日本とは比べられないほどのスピードで修正、改革していく、徹底したプラグマティズムを駆使するところで、私はニューヨークで劇を作っていたときですら、それを実感し、いたく気持ちよかった。
日本は手続きが多すぎるのだ。
ここでまたアメリカ大変そーっすね、なんてのんきなことはいってられんぞ。アメリカはアメリカでさっさと修復するだろう。影響を受ける日本のほうが大事になるかも知れんぞ。
今日は猫たちのワクチン注射。
小夏、3.48キロ、睦、3.24キロ、愛、2.92キロ。健康体でした。
日本は手続きが多すぎるのだ。
ここでまたアメリカ大変そーっすね、なんてのんきなことはいってられんぞ。アメリカはアメリカでさっさと修復するだろう。影響を受ける日本のほうが大事になるかも知れんぞ。
今日は猫たちのワクチン注射。
小夏、3.48キロ、睦、3.24キロ、愛、2.92キロ。健康体でした。
◆AOI KOMACHI
◆ハムレットクローン
◆フリークス―残酷のファッション・ショー1幕
◆ジェノサイド,ニッポン・ウォーズ―川
村毅第一戯曲集
◆新宿八犬伝―川村毅第二戯曲集
◆ラスト・フランケンシュタイン―川村毅第三戯曲集


